春学期期末課題
生まれ育つ自然的および社会環境が本当に子供の発達に影響があるのか?
KAN YOSHIMI
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教育の立場
教育現象を理論化し一つの種類にまとめるには、ある立場に立たなくてはならない。環境的要因に人間形成における重大な意義を認識し、教育的環境の分析に研究の焦点を当てる立場と、主体的要因に注目して、この根拠を深く掘り下げようとする立場がある。


「朱に交われば赤くなる」という諺がある。この諺には環境主義の教育の立場に立つ古人の知恵が発見できる。より直接には友人選択の重大性と感化の意識を明らかにしたものであるが、同様に人はある集団の中に生活することにおいて、意識的な感化・影響を受けるばかりでなく、無意識的に集団や仲間たちとの交流などの共同生活体験を通してその性格に大きな影響をうけることを指摘したものである。そこに集団や仲間の物の考え方に影響されることを予想し、また、集団や仲間の一人として一人前でないことを裏書きしている。


近代教育思想家たちの考え
プラトンは「国家論」のなかで、悪の世界で育てられるとき、無意識のうちに悪が身についている。一方で、健康地に生まれた人間は、いつしか心身ともに健康な人間になりうるものである。それゆえ、子どもに可能な限りよい環境を与えることの必要性を強調している。

アリストテレスは、果物とそれをならしめた大地との関係に準じて、母・子間の育児関係としての教育関係をとらえようとしている。

ルソーは「あなたがたの生徒の心を遠いところに向けないで、たえず別の場所、別の風土、別の時代、大地の果て、さらに天のかなたにさまよわせるようなことはしないで、いつも彼自身のうちにとどめ、直接彼の身に触れるものに心を向けさせるように努力するなら、あなたがたはやがて、彼が知覚、記憶、さらに推論の能力さえ持備えているのを見出すようになる。それが自然なのだ。」 註1 
自然の指導にまかされたたえまない訓練ということを意味するのだが子どもを理想的にする手段である。なぜなら、哲学の最初の教師は、われわれの肢であり、手であり、眼である。「生徒が学校の庭でたがいに学びあうことは、教室で教えられるあらゆることに比べて百倍も彼らに役に立つ。」註2 

ペスタロッチは、環境と子どもの成長との間の関係を強調し、感覚的印象をいっさいの知識の絶対的基礎として認めるとともに、彼が生活している自然的環境、母性愛をば幼い子ども心に植え付け、直観的観念によって本質的なものを提示し、受けとられた諸々の印象を意識の底に定着させしめようとする努力をしている。 註3 

出会い
良き指導者との出会いは大事である。自分の求める心理に当てはまる人を捜し求め、この人を師とした以上教えに服し、すべてをさらけ出すことが道理をうる近道となる。なぜ師を必要とするか、ということは、例えば良薬の飲み方をあやまれば薬も毒となるように、そのさじ加減を会得した先達の存在が「ころばぬ先の杖」の如く必要となるものである。また同じ目標にむかっている学友は、同じ目標であり互いに刺激しあい励ましあう運命を共同する仲間として、必要不可欠である。


素材的意味
環境の中で、大人がいろいろに働きかけることが子どもに大きく影響するものであり、子ども自身の形成の大胆さが大切だということだ。大人の働きかけの背後には、かつて自己の置かれた立場や育った時代の価値観が大きく影響しており、必ずしも価値多様化の時代の若い世代にとって妥当な価値か考え直さなければならない。また、子どもを個人差を無視しての一方的強制や押しつけではなんの成果も上げられない。しかし、そこに冷静な洞察量と子どもたちの幸福を願っての正しい働きかけであれば、子どもたちはそれを正当に受け止め、繰り返し学ぶことで成長していく。


潜在能力
 受胎の際に子どもに受け継がれた多くの潜在能力は、子ども体の成長とともに次第に現れるだろうが、それは多かれ少なかれ段階的に、全体として発展する傾向を示すものだ。しかし、これに方向を与えるのは、素質ないし遺伝子的能力である。例えば、アヴェロンの野生児のばあいがそれである。子の野生児は、幼児期に森林中に遺棄され、動物と等しい生活を数年送ったが、やや長じて後捕えられ保護されたとき、彼の期間や感覚や知能はいちじるしく退化していた。それらは石井タールが与えた諸種の刺激に対しても、かなりながいあいだ反応を示さなかったと報告されている。註4 


まとめ 環境は子どもたちの成長に影響を及ぼす。教師たちがいかに努力してみても、生徒たちをめぐる生活環境が貧と悪であっては手のほどこしようがない。そこに環境の問題は政治・経済の問題に直接結び付くわけであり、教育学は社会諸科学と手を結ぶのである。


【註】
(1)(Rousseau;Emile, Liver U,p.117) >>>本文へ
(2)(Rousseau;ibid, Liver U,p.127)  >>>本文へ
(3)Pestalozzi;Wie Gertud ihve Kinder lehrt.  >>>本文へ
(4)イタール著、古式弥正訳『アヴェロンの野生児』牧書店  >>>本文へ


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